23区での地域特性データから地価の将来予測(4/4)

まとめ ~ 今後の地価の予測について

ここから今までのまとめとして、今後の地価の予測について述べていきます。それにあたって、人口におけるコーホートが鍵となることから、前出の社人研による人口予測の表⑫、⑬をもう一度参照していくため、以下に再度掲載させております。

<再掲> ⑫ 5歳毎の年齢階層別人口数のこれまでの変化(1995~2015)と予測(2020~2040)

<再掲> ⑬ 5歳毎のコーホートにおける各5年間での人口数の変化(1995~2015)と予測(2020~2040)

 

地価予測にあたっての、人口・世帯数予測に関する整理:
  高齢化に伴う死亡者数の増 ~ 戸建て住宅エリアにとっての地価下落の要因 ~
  若年層の引き続きの流入  ~ マンション向けエリアにとっての地価上昇要因 ~

表⑬において、2015~2020年及びそれ以降の予測としては、15~19歳、20~24歳、25~29歳の各コーホートにおいてかなりの人口の増加があるのと考えられています。
一方、高齢の年齢階層人口に関しては、75歳以上の各コーホートにおける人口数減の合計として、1995~2000年においては約17万人、2010~2015年においては約30万人とどんどん大きくなってきており、今後は、2020~2025年以降においては約38万人、2035~2040年までに40~45万人程の人口減になっていくものと考えられています。
そうしたことをまとめ合わせると、2020年以降の人口変動としては、15~34歳の間のコーホートにおいては、5年間で30万人程といった引き続きかなりの増加がみられる一方で、高齢のコーホートにおいては、35~45万人程の人口減がみられ、また0~4歳のコーホートは、これは出生による自然増の部分ですが、35万人程との予測になっていることから、23区の人口予測としては、前述した東京都による予測の改定値のように、2025年頃までは増加し、その後横ばいから減少といった状況になっていくものと考えられます。
また世帯数のほうももう一度参照していくため、表⑧、図⑨について以下に再度掲載させております。

<再掲> ⑧ 世帯数の変化及び予測(表)

 

 

<再掲> ⑨ 世帯数の変化及び予測(グラフ)

 

 

非高齢者単独世帯は、2015年までの5年毎の増減数において、毎回10万世帯以上の増加、特に2005~2010年にかけては30万世帯を超える大幅な増加がありました。ただ、表⑬でわかるように、今後も20代を中心とする若年層の流入は続くものの、壮年・中年期を過ぎ65歳以上となり高齢者側に加わることとなる人の数が増加することもあり、2020年以降は非高齢者単独世帯の増加化数は徐々に小さくなり、2040年は減少に転じる予測となっています。

また、二人以上世帯数については、今後は概ね横ばいでそれほど大きな変化はないものの、2030年頃を境に増加から減少に変わっていくとの予測になっています。

一方、高齢者単独世帯の予測のほうは、2015年までの5年毎の増加数が毎回7~9万世帯程とかなり急速に増加しており、2025~2030年にかけては3~6万世帯程の増加と勢いは少し緩やかになるものの、2035年以降は再び高齢者単独世帯の数は毎回9万世帯ほど増え続ける予測となっています。一方、表⑬にある75歳以上のコーホート人口の減少数でわかる様に、特に2025年以降は死亡者数が多くなり、これは即ち当該死亡者が構成していた単独高齢者世帯もその分減少することを意味することから、そのなかで高齢者単独世帯の数が増加を続けるということは、その減少分を超えるような新たな高齢者単独世帯が発生し続けることを示しています。

 

戸建て住宅エリアの地価予測 ~ 潜在的な供給量の増大により下落バイアスの継続 ~

ということで、ここで住宅の話に立ち返ると、高齢者は比較的古い時期に住宅を取得している人が多く、それらは他の世代に比べると戸建て住宅であることが多いと考えられることから、死亡者数の増加による高齢者単独世帯の減少分は、戸建て住宅におけるかなり多くの空き家や滅失数の発生を生み出していくことになるものと考えられます。またこうした住宅は、1960年代、1970年代など比較的古い時期に建てられたものが多いと考えられ、その一部は相続をした人が必要に応じ建替え等も行い、住まいとして使うと考えられますが、そのまま空き家となったり、あるいは処分に伴い取り壊され滅失となっていくものも今後増えていくものと考えられます。そのようになると、図⑦にあるように、1998年以降継続的に上昇している戸建て住宅における空き家率が(2013年時点で約7%)、今後更に上昇していくことが考えられます。また、売却等に伴い滅失となり、その後新たな戸建て住宅用地となって市場に供給されていくものも、かなり出てくることと考えられます。
このように戸建て住宅に関しては、空き家の増加や、滅失後に戸建て住宅向け用地として販売されることで、供給増が予測される一方で、その需要者側としてもっぱら考えられる二人以上世帯の数は、今後横ばいから減少へと予測されていることから、戸建て住宅向けの地価は、今後も下落傾向が続いていくのではと考えられます。
また、そうした戸建て住宅エリアにおいては、その地域内の高齢者のみの世帯や高齢者単独世帯の割合が今後ますます高まるものと考えられ、それに伴う地域の活力の低下など、住宅地としての評価を下げることにつながるおそれもあり、そうしたことも地価下落の一要因となる可能性もあるかもしれません。

 

マンション向けエリアでのこれまでの地価変化
 ~ 人口流入に伴う需要の伸びが上昇を持続させている ~

共同住宅について、まず供給サイドのほうからみると、いわゆるアパート等である共同住宅(木造)における居住住宅数は、1998年から2013年の間に約17万戸減少しているものの、いわゆるマンション等である共同住宅(非木造)における住宅数は、同じ期間に約117万戸増加しており、差し引きでも約100万戸と大きく増加しています(図③参照)。また、このなかにおいては、もともと共同住宅(木造)であったものが共同住宅(非木造)に建て替わった、というものも結構多いものと考えられます。
需要サイドのほうをみると、調査期間と年数が少し異なるものの、1995年から2015年の間に、二人以上世帯が約30万世帯、単独世帯が約102万世帯、合計で約132万世帯増加しており、特に単独世帯の増加が賃貸マンションのニーズを押し上げ、これが分譲マンションも含め供給側における大量のマンション(共同住宅(非木造))供給につながっているものと考えられます。
なお、前回のレポートで、2007年から2017年はマンション向けエリアにおいて地価が上昇している一方で、1997年から2007年にかけては、マンション向けエリアにおいても地価が下落している地点が多かったことを述べていますが、この理由については以下の2つのこともその要因なのではと考えられます。
先程見たように世帯数の変化については、1995年から2005年までと、2005年から2015年までに分けて捉えると、その増加数はそれぞれ約55万世帯、約77万世帯で、2005~2015年のほうがより大きく増加することとなっています。この需要の大きさの違いが、マンション向けエリアにおける地価の動向の差として表われた、というようにも考えられます。
先程述べたように、共同住宅(木造)のほうは、老朽化・陳腐化等より、建て替えが行われたものが相当数あります。一方で、共同住宅(非木造)のほうでのこうした古く陳腐化したような建物の建替えについては、図⑱の建築時期別での居住住宅数のグラフでわかるように、1970年以前に建てられた居住住宅については、1998年に約26万戸あったものが2013年には約18万戸と約8万戸減少していることから、こられのなかでは建替え等により新たなマンションとなり、再び共同住宅(非木造)として加わっているものも結構あるのではと考えられます。ところが、1971~1980年に建てられた居住住宅数は、1998~2013年の間でほとんど減っておらず、また1980年以降に建てられたものも同様であることから、共同住宅(木造)と違い、共同住宅(非木造)はそれほど建て替えが進んではいない状態にあると言えます。

 

マンション向けエリアの地価予測
 ~ 2020~25年頃までは引き続き上昇、その後は横ばいから下落か ~

では、マンション(共同住宅(非木造))向けエリアにおける今後の地価はどの様になっていくと考えられるのでしょうか。まず需要側のほうから見ていくと、先程予測について既に述べたように、非高齢者単独世帯の数については、2020年以降、当面は増加するものの、増加数は徐々に小さくなり、2040年頃には減少に転じていく予測となっています。また二人以上世帯においては、2015~2020年において10万世帯程の増となった後、微増から微減と変わっていく予測となっています。高齢者単独世帯については、2025年以降の前後で少し勢いが緩まるものの、現在とほぼ同様のペース(8~9万世帯増)が続いていくものと考えられます。

このように、非高齢者単独世帯及び二人以上世帯においては、まだ当面はその数が増え続け、その需要も暫くは大きいものと考えられるものの、次第にその勢いは小さくなっていくと考えられます。一方で高齢者単独世帯は、2040年に至っても引き続き増加していくと予測されており、今後共同住宅においても高齢者向けのニーズはますます大きくなるものと考えられます。
なお、共同住宅(非木造)においては、1970年以前に建てられたものは相対的に数が少なく、またある程度建物の建替えは行われている状況ですが、それ以降に始まった大量供給で1971~1980年の間に建てられたものは、旧耐震での設計によるもので、構造上の不安を持つものも多いと考えられ、また建築後40~50年経過しており設備等の陳腐化が進んでいるものも多いと考えられます。2013年時点で、1971~1980年の間に建てられたもので居住者のいる住宅は約47万戸存在しており、こうした共同住宅における取壊しや建替えのニーズは、かなり大きいものがあると考えられます。
建替えに関し今後どのようになるのかを考えてみると、共同住宅(非木造)の1971~1980年に建てられたものや、また共同住宅(木造)におけるいわゆる木賃アパートでまだ建替えられていないようなものも結構存在する状況であることから(2013年において1980年以前建築のものが約18万戸存在)、こうした建物における建替えは今後も発生していき、供給量にプラスとなっていくものとも考えられます。ただ、2000年代の前半に起こったような大量の木賃アパートが建替えられ、相当量の供給につながったというようなことが再び起こるようなことはないものと考えられます。

なお共同住宅(非木造)の半分弱程度の割合を構成していると考えられる分譲マンションについては、1980年以前に建てられたものもが相当の戸数あると考えられるものの、分譲マンションの場合は建替えのニーズがあっても、合意形成へのハードルの高さや、また各権利者における生活保障的な要素も含めた事業採算性が求められるといったこともあり、建て替えが成り立つためにはかなりの条件が要求されることから、既存の分譲マンションの建て替えを通じた新規の共同住宅の供給というものは、今後もあまり期待出来ないものと考えられます。

なお、建物の老朽化や耐震上の不安から建替えが必要な状況であるのに、合意形成や事業採算性の制約からそれが出来ない分譲マンションは、今後大量に発生すると考えられ、社会問題に発展するような可能性もあるのではと考えられますが、とりあえずここではその問題提起だけに留めておきます。

築年数が経過した賃貸マンションや木造アパートにおいて発生するであろう建替えニーズと、共同住宅(非木造)の半分弱程度を占める分譲マンションでの建替えはこれからも不活発であろうという予測は、今後の供給に関してそれぞれプラスとマイナスの効果をもたらすものと考えられますが、建替えだけではそれほど大きな供給量はもたらされないものと考えられます。

あり1998~2008年などの間にもたらされたような供給増などは、今後は起こるようなことはないものと考えられます。なお、こうしたことは地価の予測にとっては、上昇側に働く要素であると考えられます。

以上のように、これまでの10年間程地価が上昇傾向にあったマンション向けエリアにおいては、2020~25年頃までにおいても現在の傾向が概ねそのまま続いていくことが予想されるものの、それ以降においては、地価が横ばいから下落傾向となるところが次第に増えていくことになるものと考えられます。なお、そうした横ばいから下落傾向となるような場合でも、マンション向けエリアにおいて、1997~2007年の間その傾向が強く見られていた様に、一部の人気の高いブランドエリアにおいては、市場における需要と供給がもたらす影響をそれほど受けることもなく、他エリアは下落しているのに関らず、地価がむしろ上昇していくといった状況がまた起こる可能性もあるのかもしれません。

 

地価予測において ~ インフレ率と金利水準を抜きには語れない ~

地価の予測を行う上では、インフレ率や金利水準との関係を抜きには語れないと思います。これまでの過去20年間程においては、デフレが続いていた時期も長く、おしなべてこの20年間のインフレ率は、どの時点との比較においてもゼロからそれほど離れていない状況であったことから、前回のレポートでもインフレ率は抜きにして地価の比較を行っていました。一方、金利水準においては、多少の変化はあるものの、ここ20年間においてずっと低金利が続いている状況にあります。ということでこれらを元にした補正等を踏まえた分析なども特に行ってはおりません。
なお、こうしたインフレ率や金利水準等は、今後の地価の変化に与える影響が少なからずあること考えられますが、このレポートにおいては前提をなるべくシンプルにすべく、そうした部分には言及しておりません。ただ、一般的に言えることとしては、金利水準が上がっていくとそれに伴い地価は下落していくはずで、またインフレ率が上昇していくとそれに伴い地価も上昇していくこととなるので、今回のこのレポートにおける予測も、そうしたことも踏まえた上で捉えて頂ければと思います。

 

次回は、マンション向けエリアを対象に、住宅の供給プロセスについての“解析”をテーマとしていく予定です。

今回は、前回のレポートのような地理的分布等からのアプローチではなく、23区全体におけるデータをひとまとめに取り上げ、そこから読み取ることが出来る戸建て住宅と共同住宅に関する現状や変化の様子から、戸建て住宅エリアとマンション向けエリアにおける将来の予測について分析を行ってみました。この次は、また測地的なアプローチに立ち返り、マンション向けエリアを対象にいくつかの地区をサンプルとして取り上げ、そこでの具体的な新築や建替え、また空き地の発生等、住宅の供給に係わる動向の様子より、今回の予測についてもう少し深く掘り下げて見ていきたいと思っています。

 

(おわり)

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