23区での地域特性データから地価の将来予測(2/4)
需要側要素 -世帯数、人口数、コーホート- の状況・変化及び予測と住宅との関係
これまで、住宅の供給サイド側から、ここ20年あまりの変化の状況をみてきましたが、これからは人口・世帯数といった需要サイド側からの変化の状況をみていきたいと思います。住宅需要の変動を起こす要因としては、まず以下の表⑧及び図⑨に示すような、世帯数の変化が最も大きなものとして挙げられると考えられます。なおこれらは、「国勢調査(総務省)」によるこれまでの世帯数の変化とともに、「日本の地域別将来人口推計(国立社会保障・人口問題研究所)」での23区における人口予測のデータを用いて行った筆者による推計を、あわせて載せているものです。
⑧ 世帯数の変化及び予測(表)
⑨ 世帯数の変化及び予測(グラフ)
若年層における単独世帯数の大きな伸びがマンション(特に賃貸)の大量供給につながっている
この表とグラフでわかるように、1995年から2015年までの20年間において、単独世帯数は約141万世帯から約242万世帯と約101万世帯の増加となっています。また、同期間における二人以上世帯数は約207万戸から約237万戸と約30万世帯の増加であり、全世帯としては約131万世帯の増加となっています。なお、単独世帯の増加数約101万世帯のうち、高齢者単独世帯の増加によるものが約33万世帯、非高齢者単独世帯の増加によるものが約68万世帯となっており、若年層を中心とする単独世帯が大きく増えていることがわかります。「23区での地域特性データから地価の将来予測(1/4)」にあるように、マンション(共同住宅(非木造))の戸数が同じ時期に大幅な伸びとなっていますが、これは賃貸マンション入居者のうちの大きな割合を占めると考えられる若年層等の単身者の大きな増加が、そのまま反映されていることと考えられます。
ちなみにマンション(共同住宅(非木造))における居住住宅数は、1998~2013年の15年間にかけて、約186万戸から約303万戸と約117万戸と増加しています。世帯数の変化が20年間のものであるのに対し、マンション戸数の変化は15年間でのものであることから、先程の世帯数の伸びを超えマンション戸数が増えていることとなっています。なお、アパート(共同住宅(木造))での居住住宅数としては、1998~2013年にかけ約17万の減、戸建て住宅(木造、非木造をあわせた)においては、同時期で約9万の増と、この双方の合計ではマイナスとなっていることから、世帯数増加の分は、全てマンション戸数の増加によりまかなわれていることが分かります。ちなみに、2003~2008年の間での共同住宅(非木造)での居住住宅数は約41万戸増えていますが、だいたい同じ時期に該当する2005~2010年の間での単独世帯数も、ほぼ同程度である約40万世帯増えています。
また、共同住宅(非木造)における空き家率がこの15年間一貫して低下傾向となっていることや、また着工数に対し滅失数が比較的少ないなど、マンション(共同住宅(非木造))においては、旺盛な需要に引っ張られ供給がついてきているような状況にあるものと考えられます。
人口は2030年頃まで、世帯数は2040年頃まではまだ増加するのでは
これまで、過去における変化の状況をみてきましたが、これからは23区内の住宅に係る将来の予測も含めみていきたいと思います。
まずは住宅の需要を形成することとなる23区内の世帯数・人口の予測からです。世帯数については先程の表⑧及び図⑨において、2020年から2035年までの予測について示したものがそうです。また、人口については以下の表⑩及び図⑪において、「国勢調査(総務省)」によるこれまでの人口数の変化とともに、「日本の地域別将来人口推計(国立社会保障・人口問題研究所)」による2040年までの予測データをあわせて載せております。
⑩ 年齢階層別人口数変化及び予測(表)
⑪ 年齢階層別人口数変化及び予測(グラフ)
世帯数に関しては、1995年から2015年までの20年間大きく増加しており、特に2005~2010年の間においては、全体で約51万世帯、単独世帯で約41万世帯と大幅な増加がありました。2010~2015年の間においても、全体で約26万世帯の増加となっております。2015年以降の5年毎変化としての予測では、2015~2020年の間は約23万世帯、その後増加幅はだんだんと縮小していき、2035~2040年に約6万世帯程度の増え方となっています。
なお、23区の人口は、2015年の約927万人から2035年には約977万人と、今後更に50万人程度増える予測となっていますが、その後は高齢化に伴う死亡者数の拡大もあり、人口は減少し始めるとの予測となっています。ただ、世帯数においては、高齢者単独世帯等の高齢者のいる世帯の増加もあり、2035年以降も増え続ける予測となっています。二人以上世帯は2030年頃をピークにその後は減少、非高齢者単独世帯については、2035年頃をピークにその後は減少との予測となっています。
コーホートによる分析
では、こうした世帯数・人口数の予測となっている背景として、高齢者数の変化や、出生者数や死亡者数の想定、また20~30歳代の人口流入の様子による人口数の変化について、コーホート(出生年による集団)による分析を行ってみたいと思います。
以下の表⑫、⑬は、「⑩年齢階層別人口数変化及び予測」のデータをもとに、5歳毎のコーホートにおける各5年間での人口数の増減の状況を示しているものです。
⑫ 5歳毎の年齢階層別人口数のこれまでの変化(1995~2015)と予測(2020~2040)
⑬ 5歳毎のコーホートにおける各5年間での人口数の変化(1995~2015)と予測(2020~2040)
表⑫は、5年毎の時点における、5歳刻みでの年齢階層別人口数のこれまでの変化(1995~2015)と今後の予測(2020~2040)を示すもので、表⑬のほうは、表⑫のデータをアレンジするかたちで、5歳刻みでの年齢階層をそれぞれのコーホートとし、各コーホートにおける人口数が5年毎の間でどのようにこれまで変化してきたか(1995~2000より2010~2015まで)、またどのように変化する予測となっているか(2015~2020より2035~2040まで)、を示すものです。表⑬に関しもう少し具体的に説明すると、例えば表⑫中で、2015年における20~24歳のコーホート(505,512人)は、2010年においては15~19歳のコーホート(337,610人)と同一の集団となる訳ですが、このコーホートは、2010~2015年の間に167,902人(=505,512人-337,610人)増えた、ということを示しています。
小産多死の傾向は更に拡大、20歳代の年齢層における人口流入は暫く継続、との予測
表⑬に示す、75歳以上の各コーホートにおける減少数を合計した数値は、対象となる5年間における死亡者数ないしは介護施設等へ移住した人数を見積もるにあたっての参考値になると考えられますが、この数は2020年以降は高い水準が拡大しつつ続いていくと予測されています。一方で、各5年間での0~4歳コーホートにおける増加数は、ほぼその5年間における出生者数を示すことと考えられますが、こちらは概ね横ばいになっていく予測となっています。
また、1995~2015年の間での各5年における20~24や25~29歳のコーホートにおける人口増加数は非常に大きく、特に2005~2010年、2010~2015年においては、それぞれ両方のコーホートで約30万人の人口増となっています。この傾向は2015年以降においても続くとの予測となっていて、23区は引き続き20~30歳代の若い世代の人口がどんどん集まってくるであろう、ということが示されています。
なお、住人基本台帳ベースでの東京都23区における人口は、2015年10月(前回国勢調査の時点)以降直近の2018年1月までにおいても、年間約9万人のペースで人口が増えており、これは2005~2010年の間に大きく人口が増えた際のペースとほぼ同じぐらいのものとなっています。もしこのペースがそのまま続くとすると、2020年は人口総数で972万人程のレベルとなることから、今回(2018年3月)の社人研の推計(約949万人)より更に増える可能性があるかもしれません。
なお東京都においては、総人口のみについて2017年3月に予測を既に改めましたが、その予測においては、2020年においては2015年より約32万人増の約959万人、2025年は更に約17万人増の約976万人で、それ以降は横ばい、更には減少傾向になるとの予測となっています。なお、この予測は総人口のみのもので、年齢階層別でのものがなかったことから、以下にもあるような年齢階層別データをもとにした分析においては、社人研ベースでのものをそのまま使用しております。
人口・世帯数の予測からみた将来の住宅ニーズの予測
~ 戸建ては潜在的供給量が過剰、マンションは引き続きニーズ大 ~
これまで挙げてきたようなことを念頭に置き、将来の住宅数の変化を考えてみると、75歳以上の各コーホートにおける減少数の増大で示されているような死亡者数の増加により、まず、住宅の空き家数の増加、あるいは住宅の滅失数の増加、につながっていくことが考えられます。現在75歳を超えているような高齢者は、比較的早い時期に住宅を取得している人も多いと考えられ、またこうした時期においては戸建て住宅での取得によるものが多かったものと考えられます。ということで、比較的古い時期に建てられた戸建て住宅などは、今後、居住者の死亡により空き家となったり、また処分により売却されるなどといったものが、どんどん増えていくのではと考えられます。
また先程の予測において、今後も増え続けると考えられる年齢階層は、大半が20~24、25~29歳のコーホートであると考えられることから、人口数が増え続ける2035年ぐらいまで、まだ当面は、こうした年齢層の人達の住まいとしての賃貸マンションへのニーズは、衰えるようなことはないのではと考えられます。
更にそれ以降(2025年~)の予測としては、20~24歳や25~29歳のコーホートにおける人口増加数が小さくなっていくということで、当該年齢階層での人口流入数が減少するとのことより、その段階においては賃貸マンション等の共同住宅に対する需要が、それまでのように増え続ける状況ではなくなっていくであろう、と考えられます。
また、こうしたコーホートの人達においては、その後に分譲マンションを求める人(もちろん戸建て住宅も求める人も)が多く現れるであろうことを考えると、分譲マンションのニーズは23区においては、2025年やもう少し先の段階においても、引き続き高い水準が続いていく可能性もあると考えられます。
一方、戸建て住宅のほうは、先程見たように(表⑫参照)、75歳以上でのコーホートにおける大幅な人口数の減少が特に2020年以降予測されていることから、居住住宅としての戸建て住宅の数は、表③と図⑤で見たように、2013年まで漸増との状況であったものの、今後は減少に転じていくことも考えられます。
(「23区での地域特性データから地価の将来予測(3/4)」に続く)